手作り甲冑奮闘記
【大鎧編・その2】
NHK『熱中時間』取材
2007年12月
2007年12月1日(土)

本日の作業は弟の誕生日祝いで食事とカラオケに行ったため、少し進んだのみ。相変わらず小札作りに没頭されている。
栴檀の板用の札は完成し、後は塗装するのみである。しかし古式大鎧の栴檀の板は大きい。



2007年12月2日(日)【源氏物語の夕べ】
本日はレリコジャパンさん主催の恒例行事「源氏物語の夕べ」に横内副長と参加する。比較的早く帰ってこれたが、さすがにイベントの後は疲労が溜まっている。また翌日は税務署がやってくるため、あまり散らかすことが出来ずに、胴の札を編んで終了。
2007年12月3日(月)

今日の開始は夜中12時。仕事終了後、ウォーキング前にひび割れした小札を修正。その原因がわかった。カシュー→水性塗料の順番で塗ってしまったからだ。水系は油系にはじかれるので、このようになったのだろう。反対にしてみたところ、この現象がなかったので今後は水性塗料→カシューの順番にすることにする。またカシューのうすめ液だが、混ぜる時はゆっくりと空気を入れないようにしないといけないことも判明。使い慣れていない素材は未知数なのでこうした実験も必要となってくる。
さて本日は4日の撮影のために買出しに行かねばならない。
買出し先はウォーキングも兼ねて東急ハンズ。
兜用の壁塗り剤を購入するためだ。ついでに使えそうな素材も探す。ところが予想以上に使えそうなものが多くあり、先日購入したものが無駄になりそうなものが多い。環類やコハゼはもうこれ以上もないものを発見し、購入する。環類は和ダンスの下がりで、コハゼは箪笥のツマミがそれにあたる。
また津の幽霊雑兵殿のアイデアで覆輪にビニールチューブを使う。チューブに切れ目を入れ、挟むようにして覆輪にするのだ。本式もこれと同様なのでかなりディティールが高いように思う。
厳星用に14mmの半円の画鋲を買うが、大厳星には少し小さいのかもしれない。資料を読んで考えなければいけないだろう。
その他に肩上紐に使う真鍮棒なども購入する。

帰宅後食事をして作業に移ろうとしたが、さすがに疲れが溜まっているのか、12時までは眠っていた。
12時に起き、その後は明日用に小札をひたすら作る。そして3時に終了した。



2007年12月4日(火)【取材】

本日は仕事の風景を撮影とのことで、16時にスタッフの方が来られる。
本当に狙ったかのようにパンク修理やリム交換などが来て、真面目に仕事をしている風景を撮っていただいた(苦笑)

さて営業が終り、食事・ウォーキングを終えて20時半より撮影開始。
撮影用にパテ塗り前の兜、カシューを塗る前の小札、針金を通す前の小札、そして塗装済みの小札を用意する。
この日は驚異的な進み具合で胴部分はあと一段となった。しかし5時間続けて作業をしたせいか、最後の方では精神力が続かず、1時半で終了。さて年内はどこまで完成させることが出来るのか・・・ひたすら頑張るのみ!


2007年12月5日(水)
さすがに今日は疲れているせいか、いまいちはかどらない。しかし気合を入れて札を綴じる。
他に兜の色塗りを開始する。前回と違い冬のためか、本当に乾かない。
と何だかんだ夜1時半まで作業をし、胴の部分の札は綴じ終わる。明日はいよいよ縅糸と弦走の革代用が届くようだ。


2007年12月6日(木)
今日は待望の縅糸と弦走の布が入荷する。仕上がりは想像通りでひとまず安堵する。糸の太さが2cmとあってかなり扱いにくい。しかし大札で札はかなり頑丈で、縅作業は問題なく進めることが出来る。
この日は嬉しさのあまり、朝5時まで作業し、前後三段まで仕上げてしまった。今回は甲冑師の真似をして、紐を吊るしながら作業をしてみる。この方法はかなりやりやすい。
また菱縫の箇所に購入した牛革だが、あまりに頑丈すぎて使うことが出来なかった。仕方がないので千日前のとらやで合皮テープを購入し、使ってみた。結果は扱いやすく、かつ理想通りであった。
とらやではその他に裏地用の布を購入。今回は蜻蛉柄にしてみた。

2007年12月7日(金)
今日は妹の誕生日プレゼントを購入するために東急ハンズへ行く。その際、金字の転写シールがあり、思わず購入してみる。鍬形に使う予定だ。
さてその帰りだが、鎧甲冑製作所さんから購入した大鎧のペーパークラフトを拡大コピーし、それを台紙にする予定である。
帰宅後は塗装し、ひと休憩したものの・・・そのまま朝まで眠ってしまった。さすがに連日の強行作業で疲れが溜まっているらしい。ただ作業的にはかなり進んでいるので、明日また頑張って作業を再開しよう。
2007年12月8日(土)
本日は四段目の縅作業をする。縅作業は大変だが、形になるので一番楽しい。また縅し方も慣れてきて、失敗が少なくなる。
この日はまた前立の製作を試みる。前立の基礎は色紙を使用。鍬形は硬くするためにボンドコーティングをし、乾燥させる。また前立本体はまずペンキ塗装し、その後ボンドコーティング、そしてカシュー塗装をする予定だ。
あとは小札を切り、作業を終了する。

2007年12月9日(日)【第十回甲冑オフ会】
本日は第十回甲冑オフ会開催日である。オフ会終了後、塗装を施す。しかしその後は爆睡してしまい、この日の作業は終了した。
2007年12月10日(月)
本日の作業は塗装と縅作業。縅は五段目に入った。また札作りは草摺の部分に突入した。
前立や鍬形だが、現在は順調に進んでいる。どのような仕上がりになるのかは出来てのお楽しみといったところか。
縅作業だが、形を整えるのに時間をかける。このあたりが甲冑作りの大事なところで、こだわりが要求される。まだ胸板などが完成していないので、形が整えにくいが、綺麗に仕上がるよう工夫していく他ないだろう。


2007年12月11日(火)
本日は前立をカシュー塗装する。また鍬形も固まってきて良い感じになってきた。
胴の縅作業だが、ようやく終了する。縅作業だがやはり5時間ほどかかる。あとは形の調整だが、胸板などをつけなければ解決しないと予想している。


2007年12月12日(水)
本日は先日購入した転写金箔を使用して鍬形を製作する。金箔だが、コピー紙の黒部分を金にするもので、それを切り取って接着する。細かい文様は塗装を筆で描くことにする。結果は想像通りでまずまず及第点の仕上がり。
さて次は胸板などの製作。しかし思ったより大きさが小さく、調整する。強度もやや弱いので補強を考えなければいけない。
明日からは日曜日の撮影のために小札作りに励まなければいけない。
2007年12月13日(木)
今日の作業は胸板、肩上、栴檀の板、鳩尾の板、そして眉庇の切り抜きと裏地貼りから開始する。また弦走を張るために仮組みをする。
仮組み後、着用してみたが、サイズは全く問題ない。様々な資料を見ながら微調整に入る。ちなみに肩上だが、かなり苦戦する。肩上は最も重量のかかる部分なので柔な作りは出来ない。また形や大きさも調整が必要でかなり手間取った。まず固紙を切り出し、針金を仕込む。そして五重ほど段ボールを貼り付け、さらに紙テープでしっかりと固定した。その結果、かなり強度が出てきてようやく問題が解決する。
一通り終了後は日曜日のために小札作りとカシュー塗装、そして八幡座の製作をする。
八幡座だが、色紙を使ってやってみたが、上手くいかない。そこで組みひもをコマの紐のようにぐるぐる巻きにして塗装してみたところ、良い感じに仕上がった。相変わらず勘でやっているとつくづく思う。
最後に残りの縅糸と組紐が届く。出来は総角はやや小さいものの、特には問題ではないだろう。しかし予算がこの時点で尽きかけており、増額が必要となりそうだ。やはり当初予想したように10万は必要であると考えられる。




2007年12月14日(金)【松屋町会合】
本日は革代用布貼りである。特製布だが、予想以上に使いやすく、代用品としては最高のものではないだろうか。その他にも背環、鍬形台などを製作する。背環だが、箪笥の取っ手にロウソク立てを使用したところ、イメージ通りで大成功であった。
現時点では何とかイメージ通りに完成しそうな雰囲気である。
ちなみに肩上の布はリボン、文様は修正ペンで記入する。
2007年12月15日(土)
本日は息抜きのため、HaNiWa☆とカラオケに行く。とある人に自分の趣旨を上から完全に否定され、非常に頭にきていたので、鬱憤晴らしも含めて遊びに行った。幸か不幸かどこも満員でカラオケ屋めぐりをしていたのだが、その間思いっきり愚痴をこぼせたのですっきりする。いつもながら愚痴を聞いてくれるHaNiWa☆には感謝。
で、さすがに今日は作業はやめておこう・・・と思ったのだが、背環の取り付けや、塗装、紐の調整などをついついしてしまう。明日はビギナー教室と取材があるので、このあたりで終了。しかし時間は朝の4時になっていた。
2007年12月16日(日)【ビギナー教室/取材】
本日はカタヤマサイクルのビギナー教室と取材が入る。運が良く、雨天にならずにすむ。
この日の取材はビギナー教室とトライアル競技を当店のサポート選手にやってもらい、撮影する。一番のポイントは荷物番の傍ら、外で小札編みをやっている私を撮影するのだが、寒さのため、少し編んで終了する。
ただスタッフの方(特にカメラマンの方)にトライアルの魅力が少しでも伝えることが出来、参加者の皆さんにも教室自体を喜んでいただけたのでまずは大成功だと言える。

教室終了後は大厳星用のぬいぐるみ目玉ボタンとだんじりやさんに据文金物を購入するために天王寺へ向う。
だんじりやさんは前回の胴丸の時にお世話になり、久しぶりに訪問したところ、覚えていていただいた。朝比奈殿のことや英殿の話をしながら撮影を進める。肝心の金具だが、見事意に適うものがあり、購入する。
次に向ったのは手芸チェーン店のABCクラフト。
しかしここでの取材はかなり緊張する。なぜならこのお店の大半は女性客で正直な話、男性は非常に入りにくい。いつもは恥ずかしいので心を閉ざして(笑)買物をするのだが、この日は取材のため、質問に答えないといけない。しかし恥ずかしさは置いといてABCクラフトは面白いものを多く販売しており、コハゼに合いそうなボタンを発見する。次回作に是非取り入れたいものだ。
こうして買物の取材は終了し、少しだけプライベート時間。学生の時から通い続けているカレー屋「リッツ」さんに行く。・・・しかし残念ながら閉店していた。まさか・・・潰れたのではないのかと心配になる。

さて取材だが19時40分に再開する。
まずは部屋でのインタビューから撮影。色々と甲冑や日本史など、自分の思いを語りまくってしまう。うーん、疲れているはずなのに何でこんなに喋れるのだろうか。
また大鎧を好きになったきっかけの『太平記』(特に尊氏が鎌倉幕府打倒に立ち上がるシーン)を取材の一環で観ることになる。もう何回も観、いい加減見飽きているはずなのに・・・やっぱり良いシーンはいつ観ても良い。思いっきり大鎧萌え状態になり、取材のことを忘れてしまいそうになった。

部屋でのインタビューを終え、甲冑製作再開。
今晩の作業は大厳星と紙紐を鉢に貼り、そしてボンドコーティングすること。結果だがまずは成功と言えるだろう。良い感じに仕上がった。また据文金物も製作する。こちらも満足いく仕上がりになる。
取材終了後は色々修正してみたりしていたが、段々とエスカレートしていき、ついに弦走を付けてしまった。仕上がりは上々でうっとりしてしまう。イングさんにお願いしてよかったとつくづく感じる。
この日は結局朝5時まで作業をし、最後は座ったまま寝てしまっていたので、切り上げる。
明日は教室の代休でお休みなので心が浮き立ってしまう。

2007年12月17日(月)
本日は念願の完全休日。よほど疲れていたのか、午後二時まで爆睡してしまう。思えばサイクルモードからずっと完全休日がなく、ダウンしかけていたので、今日の休みは本当にありがたい。
遅い昼食を食べ、塗装や貼り付けなど乾燥に時間を要するものを製作する。
製作後、部屋に戻って久しぶりにサイトを更新する。またお江戸オフ会のお知らせや京都節分などのお知らせをアップする。やっとサイトを触る気力が戻ってきた。
夕食後、しばらくのんびりとした後は作業再開。
今日は脇板と障子板を製作する。また鳩尾の板の仕上げなどをする。
胴だがかなり形が整い、大鎧らしくなる。今日も最後はうっとりと眺め、就寝する。・・・終了時間は夜中3時半であった。



20071218日(火)
本日は障子板、篠垂、鋲、脇板の取り付けを行う。どれも初挑戦で苦戦するが、何とか接着終了。しかし障子板のみは大きすぎて不満であったので、切って調整してみることに。結果は大正解で満足のいく仕上がりとなった。
大鎧も段々と形になっていき、作っていくのが楽しくなってくる。また着用実験をしてみたところ、現時点では色々と微調整がいるものの、大規模な変更はせずにすむと考えられる。

2007年12月19日(水)
仕事終了後、ボンドが無くなったため、コーナンへ買出しに行く。そして帰宅後、作業を開始しようとしたが、睡魔に襲われ、作業が出来なかった。
2007年12月20日(木)
本日はシコロ作りを開始する。一段目が48枚とかなり数が多い。ただ吹返だが、良い感じに仕上がる。
その後、小札を作り、そして草摺を胴に付ける。以外と大きく、資料を見ながら調整をしていく。30分ほどあれこれと触りながら、とりあえずは問題のない状態に落ち着く。特に問題だったのは胸板の隙間で縮めることにする。

20071221日(金)
今日は誕生祝いということでカニ道楽へ行く。
帰宅後に作業開始。今日はシコロの二段目の製作をする。ただ一段目にカシューを塗装しようとしたが、溶剤がなく、断念する。仕方がなく、ひたすら小札を作り続ける。
二段目だが、その大きさに悩む。ペーパークラフト通りにすると大きるため、調整を図ることに。果たして上手くいくのか心配である。
今日、勉強していて収穫があったのは「控えの緒」の存在である。以前から鳩尾の板についている紐が何なのかわからなかったが、甲冑図鑑を読んでその正体を知った。つまりその紐は胴のコハゼに付けることで鳩尾の板が裏返らないようにするためのものであるらしい。また一つ進歩した。
2007年12月22日(土)【東京へ出発】
本日は明日のお江戸オフ会に参加するため夜行バスで出発する。そのため作業はシコロの一の段をカシュー塗装、二の段をボンドコーティングして終了。後は帰阪後の作業となる。
2007年12月23日(日)【第三回お江戸オフ会】
本日は終日東京にいるために作業は全く出来ない。しかし光山堂のご主人とお話しながら研鑽する。
ちなみにこの日は携帯を東京で落とす痛恨事に見舞われる。
2007年12月24日(月)【取材/鎌倉観光】
本日は鎌倉参拝の取材。折角東京まで出てきて、しかもこの日は私の誕生日なので鶴岡八幡宮に参拝する。この日は昨日とは違い、快晴かつ気温も穏やかでとても気分が良い。
さて今日のルートだが、まず頼朝公のお墓をお参りする。今年の1月にお参りしたのだが、まさか誕生日に来ることになるとは予想だにしなかった。
頼朝公のお墓の次は鎌倉駅へ向かい、更に由比ガ浜へと向う。
今日の由比ガ浜だが・・・本当に綺麗で恐らく今まで見た中で一番素晴らしい由比ガ浜で、思わず取材のことを忘れ、何時間でもいれそうなそんな最高のシチュエーションであった。
由比ガ浜の次は食事を取り、いよいよ八幡宮へ。
段葛を通り、八幡宮参拝。気持はあくまで甲冑または束帯を着用している気分で参拝した。
実はこの日、お守りを購入するつもりはなかったのだが、昨日携帯を落としたので、厄納めという意味も込めて購入する。大鎧の兜に仕込むかどうかは思案中。
参拝の後は宝物館へ入館する。そこには大鎧の復元があり、かなり参考となる箇所があった。
一つはシコロ上段の菱縫。やはり不要な後部までは菱縫はされていなかった。
次に草摺。四段も長さによってやっても良さそうである。
そして鳩尾の板にある控えの緒の結び方。これも予想通りであった。ただ残念なのは背の部分が見られなかったこと。いつも甲冑展示で思うのは背の部分は必ず見えるようにするべきである。

こうして鶴岡八幡宮での撮影も終了し、その後は自由時間となる。
徒歩で鎌倉駅へ向かい、江ノ電で藤沢方面へと向う。目的は江ノ島から見える夕景の富士山を見ることで、ギリギリで間に合う。
江ノ島では名物のしらす丼を食べるが・・・不味くはないものの「ああ、しらすやな」というのが率直な感想であった。

江ノ島を出た後は新幹線で帰路に着き、大阪へは11時に到着する。
さすがに創作する気力がなく、シコロを塗装してこの日は終了する。
2007年12月25日(火)
本日は作業が出来なかった。
東京で無くした携帯の手続などや昨日までの疲れがあり、寝てしまったためである。
2007年12月26日(水)
本日はまたひたすら小札作りに精を出す。シコロの二の段にカシュー塗装したついでに兜も補修する。
内容はこれだけだが、終了したのは夜中3時であった。
2007年12月27日(木)
本日はシコロの三の段が編みあがる。そして引き続き、小札の製作をし続ける。文章で書くと何も進展がないようだが、この作業が地道で一番時間がかかるものである。
ただこの日は溜まっているメールへの返事やサイトの更新などをする。
2007年12月28日(金)
本日は店舗の棚卸と雨天のため、シコロに色を塗って作業は終了する。シコロは三の段が仕上がる。
2007年12月29日(土)
本日は棚卸最終日。この日は小札を製作して終了する。
2007年12月30日(日)
今日は墓参の日。出かける前に塗装をしておく。
墓参から帰宅後は年賀状製作に取り掛かり、その後小札製作、そして小札編みに取り掛かる。
四の段が編みあがり、いよいよシコロは残すところあと一段である。
2007年12月31日(月)
本年最後の作業は朝に四の段を塗装。そして年明け前にカシュー塗装をして終了する。いよいよ2008年がスタートするが、完成させるようがんばろう。
【その3へ】